第27章 孤独を選んだ君へ 時透無一郎
毎日のように身体を求められ
有一郎はおろか他の男と少しでも話せば殴られ蹴られもした。
一度だけ、たった一度だけ
別れを告げたことがある。
その日はとても最悪な一日になったのを私は忘れることはないだろう。
死を感じた程だ。
血を流して意識のない私を貪るように抱き続け
目が覚めた頃には痛む体を庇う私に無一郎は無表情な顔でクラスメイトの名前を一人ひとり呟きそして意味なく笑ったのだった。
何も言ってはいないが、
他をも巻き込むぞと言わんばかりの雰囲気に無一郎に逆らってはいけないとびしびしと痛いくらいに本能が告げる。
それ以来、一人の時間を作って
友達とも距離を置き、無一郎以外関わる事を避けていた。
基本無一郎が嫌がる事をしなければ平穏な1日は保たれるからだ。
それなのに何故、今無一郎を怒らせているのか。
考えても心当たり等なく、じんじんとする腫れた頬を押え痛みに耐えるしかなかった。
考えあぐねる私に大きな溜め息を吐き出す彼。
その仕草でも肩がびくっと過剰に反応してしまう。
「……本当に君って頭が弱いよね、本当に…可哀想なくらい」
私の首にそっと触れて、片手で指に力を込められれば
気道が塞がり、息が出来なくなる。
そんな私に薄ら笑いを浮かべる彼は、本当に悪魔のようだ。
視界もぼやけてゆらゆら動く彼はまるで陽炎のようだった。
最後に彼が何かを呟いていたけど
そこで私の意識はプツリと途切れ、視界は暗く閉ざされていった。