第25章 何を犠牲にしても 時透兄弟
空気が変わった。
肌を刺すような、重苦しく鋭い威圧感。
鬼狩りだ。それもきっとこの雰囲気は柱。
「……」
『………』
背後にいるそれを確認するべく、振り向けば私の事を見て瞠目した
懐かしい会いたかった片割れの一人。
『…久しぶりだね、無一郎』
「…っ…なんで……」
酷く狼狽える無一郎を抱き締めたくても、こんな鋭い爪では近づくことはおろか触れることさえもできないだろう。
『…会いたかったから…それだけ…ねぇ、有一郎は?』
「…兄さんは死んだ…僕が11の時に…っ鬼に殺されて」
『…そう』
彼の手は刀に添われてるだけで抜く動作を見せない。
カタカタと小刻みに震える彼。
私を切るかどうかひどく躊躇っていた。
『…駄目だよ、無一郎…私は鬼
色んな人を傷つけたの』
「…っ…」
『貴方は鬼殺隊…柱でしょ…なら、私を斬らないと』
口元を押さえて、冷や汗を伝う彼に
自然と笑みがこぼれた。
『相変わらず、優しいんだね…ねぇ、どうして私が鬼になったか教えてあげようか?』
どうしてだろうか。彼が信じられないと言うような顔で私を見て
事実を受け入れたくない顔をするだけでそれとは逆に酷く落ち着いている自分がいた。