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鬼滅の刃 戯れ事 (短編)

第25章 何を犠牲にしても 時透兄弟




『…あの時、私に言おうとしたことを教えてほしかったんだ…こんな醜い姿になってでも二人の話が聞きたかったからだよ』

「…だからってっ…」

『ねぇ、聞かせてほしい…そして無一郎のその日輪刀って言うんだっけ?刀で人に戻してほしいな』


無一郎に会えてとても嬉しい。
今すぐにでも抱き締めて、体温を感じたいのに出来ないのは私が鬼だから。
今だって、美味しそうと食べたいと涎が出てしまいそうになる。

それでも二人から聞きたかった。
最愛の二人からの愛の言葉を。


「…僕達はが好き…そう伝えたかった」

『…うん』

「今でも僕はが好きだよ…きっと兄さんが生きてたとしても兄さんの想いも変わらなかったと思う」

『…うん』

「僕は鬼狩りで…柱だ…だけど、どうしてかな…っ…体が言うこと聞かないっ…君を傷つけたくない…っ斬りたくないんだ」

無一郎はとても悲しい顔をしてそう言葉を発した。
今にも泣き出してしまいそうな、顔。胸が罪悪感に襲われぎゅっと締め付ける。

『…ごめんね…でも直接聞きたかったの…もう1つわがままを聞いて?』


そっと近づいて無一郎との距離を0にする。
驚いた浅葱色の瞳を忘れないように見つめて、彼の刀を奪い取る。
ぎゅっと彼の手に日輪刀の柄を持たせ、一緒に己の首へと力を込めた。

嫌だと泣き叫ぶ君を落ち着かせる為に少しかさついた唇を重ね合わせれば、ほおら一瞬の隙が出来た。


くるくる視界が回るなか、見下ろす無一郎が最後に見えたこととても嬉しくてもう未練はない。

地面すれすれで受け止められた温かい温もり。そして優しい雨が頬を濡らした。

泣かないでよ…そんな顔をさせたいわけじゃない。

ごめんね、無一郎から貰ってばかりで。
ごめんね、君達の嫌いな鬼になってしまって。

ボロボロと消えゆく体。
最期に伝えたいと全身に力を込め、言葉を紡ぐ。


『私も…大好き…ありがとう…』


今度生まれ変わったら、また君達に会えるかな…
私は地獄に行くからそう簡単には会えないのかな…

もう一度願いが叶うなら、君達の隣で笑い合いたいな

意識が遠退く中、最後に見たのは大好きな片割れの顔と優しく包み込む満月の温かい光だった。
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