第24章 *願わくは夢でありますように 時透無一郎
『…今日は綺麗な花が咲いていたんだよ?昔よく摘んでたよね?
ピンクのお花』
無一郎の体を温かく濡らしたタオルで優しく拭く。
無一郎の世話は私がしたいとお館様に申し出た。
私の気持ちを汲んでくれたお館様はいいよと優しく笑ってくださったのだ。
無一郎に語りかけるように、言葉を発しながら体を綺麗にする。
新しい包帯を巻こうと手を伸ばせば、無一郎の唇から小さな呻き声が聞こえ無一郎を見れば閉じられた目蓋を開け、久方振りに綺麗な大きな浅葱色の瞳と目があった。
『無一郎っ!!!!』
感激のあまり抱きついた私は気づかなかったのだ。何かが可笑しいことに。
何の反応を見せない無一郎に疑問を抱いた私はゆっくりと体を離した。
『む、無一郎?』
「…………」
『無一郎、大丈夫…?体は痛くない?』
「………」
『……無一郎、聞こえてる?』
不安が募っていく。顔を見て話す私を一切見ない無一郎に不穏な空気が流れる。
聞こえてるのか問えば、やっと視線が絡み合うもその瞳は私を見てるようで見ていないような感覚だった。
「…………誰…」
『っ?!!』
そして、彼のポツリと呟いた言葉はまるで頭を誰かに殴られたような強い衝撃が脳を走っていった。
『…じ、冗談はやめてよ…今日はエイプリルフールじゃない…よ』
「………」
『無一郎…』
彼は私の存在など気にすることもなく、部屋を見渡した。
そして、頭を抱えて苦しそうに呻く彼に私はいてもたっても居られず抱き締めた。