第24章 *願わくは夢でありますように 時透無一郎
鴉に案内されたのは立派なお屋敷だった。
小道や荒んだ道を案内され、そろそろ体力が限界に差し掛かったところで頭上を飛んでいた鴉はお屋敷の前で着地した。
中にはいるよう、片羽を前に向け行けと一言告げたかと思えば
ばさりと飛びどこかに消えていった。
恐る恐る敷地の中へと入り
石だたみで出来た道を歩くと真っ白い綺麗な女性が静かに佇んでいた。
とても綺麗な人だった。同じ人間とは思えないような。仕草や言動全てが人種なのかと疑いたくなるほど。
その方はあまね様と言うのだそうだ。
お屋敷の中へと案内される中
鈴のような綺麗な音色のどこか凛とした透き通った声が鴉と同じ内容を告げた。
そして、無一郎は助かったが兄の有一郎は助けてあげられなかったと。
動かす足がとても重く感じた。
まるで重りをつけているように
1歩1歩踏み出すのがやっとだった。
嘘ではない。紛れもない事実なのだと理解した。
通された襖の前で立ち止まり、あまね様はペコリと頭を下げてもと来た道を戻っていった。
この向こうに無一郎がいる。
震える手で襖を開こうとするもうまく力が入らない。
自身を落ち着かせるため、深呼吸をして指に力を込めて引けば、
部屋の中央に敷かれた布団の上で
小さな寝息をたてる無一郎がそこにいた。