第24章 *願わくは夢でありますように 時透無一郎
突然の知らせは身が引き裂かれるような思いだった。
なんの前触れもなく突然表れた鴉。
見た目は普通のどこにでもいる鴉だ。
ただ、唯一他の鴉と違うのは人語が話せると言うこと。
その事実にも驚いたが、その上を遥かに越えるのはその黒い嘴から告げられた一言。
〈時透有一郎、時透無一郎鬼に襲われ負傷〉
何を言ってるのかさっぱりわからなかった。
つい先日、あの二人と遊んだばかりだと言うのに。
負傷?…鬼?そんなありもしない話を何故突然この鴉は私に告げたのか。
大きな羽をばさりと広げて見せた鴉は続けざまに兄は事切れたと無情にも聞こえる音色で呟いた。
全身から血の気が引くような感覚。
そんな悪い冗談はやめて、手先がさーっと冷たくなり足がガタガタと震えた。
そんな私に気にすることもせず、鴉は広げた翼を羽ばたかせ、私の頭上を飛び立ち2、3と旋回する。
ついてこいと言ってるのか。
嘘だと信じたい。
けれども、その鴉の動作が、言動が、残酷にも事実だと証明してるようだった。
震える足を無理矢理動かし、頭上を飛ぶ鴉の後を追いかける。
元々山育ちということもあって、
体力には自信がある方だった。
下山して知らない道を案内する鴉。
ただ、追いかける事しかできない私は見失わないように走り続けた。