第23章 闇夜に浮かぶは真っ赤な花 時透無一郎
『待って!!お願い!!少しだけでいいの!血を分けてくれない?』
必死に懇願するから何かと思えば、獲物になれとは言った。
僕がなんで知りもしない得体の知れない奴に血を分けなければいけないのか。
鬼じゃないから見逃したけど、
人に危害を加えるのならば成敗した方がいいのか。
刀に手を振れようとした僕に
は何度も頭を下げた。
『お願い!!…少量だけでいいの!!血を飲まないと私死んじゃうから…だから!!』
「なら、僕じゃなくてもいいでしょ?他をあたったら?」
冷たく突き放す僕になおも食い下がる。
そこまで鬼じゃないから、理由だけ聞いてあげようと耳を傾けると切羽詰まったような顔で僕を見上げ事情を話した。
その日、気に入った匂いでないと
血を飲んでも満たされないとのこと。
血を飲まないと、朝が来た瞬間に塵となって消えてしまうこと。
泣きながら話す彼女に、何故か同情した僕は己の首を彼女に差し出した。