第23章 闇夜に浮かぶは真っ赤な花 時透無一郎
『吸血鬼…鬼に近いけど私が飲むのは血』
「……霞の呼吸…壱ノ型…」
『ああああー!!待って、待って!!人殺してる訳じゃないから!!』
刀に触れ、体勢を構えるその人に慌てて制止の声をあげる。
『貴女、鬼狩りでしょ??私は鬼じゃないから狩る必要性ないって話!!…それに初対面で斬りかかるのはどうかと…女の子なんだからもうちょっと落ち着いて「僕、男だけど」…え、えええ?!』
警戒する相手を宥めるように、ニコニコ笑うに自分が男だと告げるその少年は続けて自分の名を名乗った。
『嘘でしょ?!…だってくんくん…匂いが…くんくん…え?え?え?』
「近いんだけど…」
少年の肩を両腕でホールドし
首に鼻先をつけて必死に匂いを嗅ぐ。
抵抗はしないものの、嫌そうな顔をした無一郎は離れてと一言呟いた。
『ご、ごめんね…女の子の匂いがしてたから…あ、精通がまだなのかな?』
「…それは貴女には関係ないでしょ」
必死に詫びるに無一郎はどうでもいいように返すと、日輪刀をしまいに背を向け歩き出す。
『え?無一郎君どこに行くの?!』
「鬼じゃないなら、僕には関係ない…ここで無駄な時間を費やすなんてことはしたくないんで」
すたすたと足早に次の目的地へと赴く無一郎に、慌てては後を追った。