第22章 思えば思わるる 時透無一郎
ふわふわとした無重力を体感してような感覚。
いつも夢を見る。
あの頃の三人で楽しそうに駆け回る山道を。
なのに、何故?
どうしてこうも変わってしまったのだろう。
急に場面が変わり、3つの綺麗な川が目の前を流れていた。
足元に草や花が咲いていてとても綺麗な場所だ。
その向こうには有一郎がいて。
手を振って近寄ろうとするけれども、川の流れが急に激しくなり近寄れない。
それに、さっきから必死な顔で何かを叫んでいるようだった。
『有一郎っ!!…聞こえないよっ!!貴方のところに行きたいんだけど、どうすればいい?!』
「、お前はまだ来るな!!戻れ!!」
『何で?…せっかく会えたのに…』
「お前はまだやるべき事があるだろうっ!!」
有一郎へと叫んだ声は彼に届いて返されたのがまだここには来るなとの言葉だった。
そして瞬時に理解する。ここは三途の川だと。
そして私はあの世とこの世の境い目にいるのだと。
そう気づいた瞬間、またも視界が眩み意識が薄れていくのを感じた。
もうどうでもいいと思った私はそのまま身を委ねる。
もう疲れた。
この感情を現すとしたらこの一言だ。この世に残ったとしても記憶障害の彼は一緒に任務したことも、私の事も忘れている。
もう疲れた。彼への想いは積み重なるのに、彼にとっては私は頗るどうでもいい存在なのに。
もう疲れた。彼の一言一句に感情を大きく揺さぶられるのは。
もう疲れた………。