第21章 *夢見心地のお姫様2 時透無一郎☆
『え?え?ち、千秋…じゃなくて時透君?!』
後姿の彼を視界に捉えて、慌てて後方へと視線を向ければ一緒にいたはずの千秋はどこにもいなかった。
『あ、れ?千秋は?!てか、時透君いつのまに?!部活は??』
「……」
脳の処理がとてもじゃないけど追い付かない。質問責めしか出来ない私に時透君は黙ったまま、足早に何処かへ向かう。
機嫌が悪いのが手に取るようにわかった。その原因も。
やはり避けていたのが拙かったのだ。
そのまま、抵抗する気もなく会話するわけでもなく
ただ引き摺るられるようについて歩く。
そして、足を止めた時透君に釣られるように私も足を止め
俯いてた顔を上げれば、見知った家にたどり着いた。
そう。あの厭らしい情景が私をこんなにまで悩ませた例の場所、とでも言っておこう。
そのまま時透君は私の手を掴んだまま家の中へと入る。
玄関のたたきを視認すれば、あの靴はなく酷く安堵に包まれた。
時透君はそのまま階段を上り
右部屋の時透君の部屋へと私を連れていく。
ドアをパタリと閉めて、ベッドへと腰かける時透君。
『え、えっと時透君……私は何処に座れば……』
すると時透君は空いた隣のスペースにポンポンと手で布団を軽く叩く。
そこに座れと言うのだろう。
こくりと頷いてそこに腰掛ければ、やっと黙りを決め込んでいた時透君が口を開いた。