第20章 *パンドラの箱に残された物 時透無一郎
授業が終わり六間目の準備をする私に無一郎君はまた教科書貸してと悪びれる様子もなくいい放つ。
きっと無一郎君は教科書を忘れたなんて言ってるけど、嘘だと思う。
私に密着したいが為の口実なのだろうと。現に無一郎君のスクールバッグから5限目に使った現代文の教科書が入ってるのに気づいてしまったから。
それでも、何も言わず教科書を貸すのは言って何かされたら怖いから。
無一郎君の機嫌を損なわないように、6限目も1つの教科書を共有して授業を受けた。
6限目の授業は数学だった。
苦手な数式が黒板の上をずらーと並びノートに書き写すだけで精一杯の私に無一郎君は退屈なのか欠伸をひとつした。
無一郎君のノートを盗見れば、綺麗な字でノートが埋まっていた。
そして、問題をもう解き終わっていた。席順からして次の問いは私が当てられるだろう。
『……む、無一郎君』
ひそひそとないしょ話をするように声を小さくして無一郎君を呼ぶと無一郎君は眠そうな表情をこちらに向ける。
『お願いっ!ノート写させて!』
「条件付きでいいなら見せてあげるけど?」
それでも先生に当てられ、答えられず恥ずかしい思いをするならと
条件の内容もよく聞かずに首を縦に振る。
「えー、この問題は、それからこっちは…」
私の予想通りに先生に当てられ、黒板の前に移動する。
無一郎君のノートをそのまんま写した答えを黒板に書けば先生に正解と褒められた私は安心からかホッと息を吐き出した。
席に戻れば無一郎君がニコニコと嬉しそうに笑い、条件は後で伝えるねと耳元で囁く。
気になるけどもすぐにわかるだろうと、授業に意識を向けた。
授業が終わればそのままホームルームに入る。
必要事項を淡々と述べる先生は話終えるとすぐに教室を出ていった。
『無一郎君、さっきの条件って?』
「あぁ……部活が終わった後
後で渡すからそれを明日はずっとつけてね」
ニコニコと笑う無一郎君になんなのかと深く追求すれば後のお楽しみと言うことでうまくはぐらかされ、無一郎君は先に教室を出ていった。