第20章 *パンドラの箱に残された物 時透無一郎
『と、時透君…』
昼休み、私と時透君は誰もいない屋上で昼食をとっていた。
二人の間は気まずい沈黙が続いて、その雰囲気に耐えきれなくなった私が口を開く。
時透君は箸を止め、感情の読み取れない浅葱色の瞳をこちらに向けた。
「何?」
素っ気なく返事されれば、どう切り出せばいいのかわからなくなる。
聞きたいことは山ほどある。
いつまで続くのか
どうしてこんなことをするのか
先生にはまだ害はないのか……と。
迷いに迷った私は、意を決して時透君に聞くことにした。
『時透君、どうして…私に執着するの?』
「さあね、それより名前…時透って呼ぶのやめてくれる?」
私の問いに曖昧にはぐらかした後
突拍子もなく苗字呼びが気に入らないと時透君は眉を寄せた。
『……無一郎君』
「上出来」
下の名前で呼べば、にこりと満足そうに笑い食べかけの弁当箱に箸が進む。
そんな無一郎君を横目に私も残りの半分を平らげた。