第16章 柱と隠の恋愛事情 1時透無一郎
「脱いで」
到着するなり優しく降ろされ、思わず胸がキュンとなる。
私を労って温泉に連れてきたのだと知るととても嬉しい気持ちになった。
素直に草履と足袋を脱ぎ温泉へと足を浸ける。
丁度いい温度が足を優しく包みとても気持ちが良かった。
感謝の意を伝えるべく時透様を見上げれば訝しげな表情を見せる。
「せっかくの温泉なのになんで裸にならないの?」
『は?!と、時透様…お気遣い大変有り難いのですがまだ任務中でして…』
「僕が良いって言ってるんだから早く脱いで」
柱にそう言われてしまえば抗えない。
きっと邪心はなく、ただ純粋に疲れをとれとの事だろうと私なりに解釈し羞恥に耐えて裸になり温泉へと体を浸ける。
それを見届けた時透様も裸になられ隣で体を温める。
じんわりとした熱が体の疲れを癒す。
恐れ多くも柱の方と湯浴みをすることになって、なんでこんなことになったのかと今まであったことを思い出してみる。
最初の印象は最悪だった。
竈門君に石はぶつけるし
今でも変わらないふてぶてしい態度。けれど、今のように時折見せる優しさに胸が高鳴ることがある。
昨日だってそうだった。
1週間の謹慎に何故彼は家まで来てくれたのか。
ただ、私に不満がありあの時の事を咎めるだけならいつでも出来たはず。忙しい身でそれができないのなら鎹鴉伝に私の上層部に連絡いれてもいいはず。それさえしなかった。
なら、なんだと思考を巡らせるとある1つだけが思い浮かんで。
――私を心配して様子を見てくれたのではないか――
盗み見るように、隣を見れば視線がかち合って、思わず視線を反らした。