第16章 柱と隠の恋愛事情 1時透無一郎
胸が痛いくらいにはねあがる。
初めて知るこの感情。
知らない、知らないこの感情の名前を。
「…僕はそろそろ行くね、君は好きなだけここにいなよ
もちろん、帰りもよろしくね」
ザパァッと立ち上がる時透様に風呂敷から手拭いを出し差し出す。
それを受けとる時透様はにこりと珍しく笑いまた胸がとくんと甘く疼いた。
そしてさっと隊服に身を包んだ後、日輪刀を腰に携え里の長に会うべく来た道を戻っていった。
『私の足を心配して優先してくれるなんて…』
本来ならば長に挨拶をするのが優先であり常識。
それを足の挫いたただの隠を労りここまで運んでくださった優しさに胸が苦しくなる。
『それに指名もされちゃった…』
頬が熱くなるのを感じて手を添える。
この感情に気づいてはいけないと、
首を振り自分も報告をと立ち上がり湯浴みを終えるのだった