第16章 柱と隠の恋愛事情 1時透無一郎
『…どうして分かったのでしょうか?』
「んー…気配…それと匂いかな」
この柱は変態でしょうか?
いいえ、違います
そんな匂いを覚えられるほど密着することなんてあったかと思い返せば思い当たるのはお茶こぼしの一件。
あの時かと合点がいった。
忘れることで有名な時透様が
よく私の匂いだと気づいたなと感心する。
『っ?!…っ』
時透様を背負って走る中、泥濘に気づかずに足を挫いてしまう。
そういえば数日前に雨が降ったなと思い返して心の中で舌打ちをひとつした。
バランスを崩しながらもすんでのところで体勢を立て直し痛みを我慢しながら走り続ける。
久しぶりの任務でもう失態は許されない。
何としてでも日が暮れる前に時透様を送らなければと自分に自分で気合いをいれて気力を奮い起こす。
なんとか動けるのを確認した私は
ペースが少し落ちてはいるも走ることが出来た。
時透様に気づかれずに目的地まで全力で走ると頭上を飛んでた鎹鴉が間もなくと告げる。
『はぁっ…はぁっ…はぁっ…時透様到着しました』
「……足、怪我してるの?」
『大丈夫ですっ…ちょっと捻っただけなので』
刀里に到着し時透様を降ろして目隠しを外す。
背中に感じる熱が離れ、身が軽くなったぶん足にかかる負担も少なくなる。
無理して走ったせいで症状は悪化し大分腫れ上がってるだろう。それでも今裸足になるわけにもいかないから我慢してたというのに目隠しを外された時透様は瞬時に見破った。