第16章 柱と隠の恋愛事情 1時透無一郎
後藤さんは懐から地図を取り出し私に渡した。
刀の里は誰も行き方がわからないのだ。
鴉も隠もランダムに決められ
その人をオブって言われた場所まで運んでは次の隠に任せる。
それを何度も繰り返して刀の里の情報は漏れずに守られてきた。
しかも今回のラストロードは私だ。
刀の里に関わる任務なんて責任重大だ。
しかも柱ときた。
もう二度とあんな過ちはおこすものかと、二度と深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「到着マデ残リ三時間、シュッパツハ夜明け前」
後藤さんが去ったあと、数分後に鎹鴉がきては残りの時間を知らせてくれた。
後三時間後…その間鎹鴉と念入りに打ち合わせをする。
ここから刀里までの最短ルート。
柱を背負ってどれくらいで到着するのかを。
そして時間はあっという間に過ぎていき隠の姿を視界がとらえる。
その場所で待っていれば隠の人が誰かを背負ってこちらまで駆け足で近寄ってきた。
『お疲れ様です!!交代です!』
「お疲れ様です!!よろしくお願いいたします!」
隠の人と挨拶をして情報を交換後に風呂敷を渡された。それを受け取ってからこれからおぶる人に挨拶しようと目を向ける。
『………(まじかよ)』
目隠しされたそいつは先程会った人で、つくづく自分の運の悪さに
溜め息が出そうだった。
柱と言われた時点で嫌な予感はしていたが、まさかここまで何度も会うなんて偶然にしては出来すぎてるような気さえする。
『これから私が運びますのでよろしくお願いいたします』
「早くしてね」
やはり人を苛立たせる話術をお持ちのようで。
冷静にと自分に暗示をかけ、時透様を背負って目的地まで急いだ。
思ったより軽い時透様。
走ってる最中、時透様の髪の毛が首すじに当たってくすぐったい。
それでも何か言って揉め事をおこしたらと思うとやはり我慢するしかなかった。
「ね、やっぱり昨日の子だよね?」
『……………はい』
風を切りながら走る私に時透様は口を開いた。このまま気づかずに背負われていればいいものを…
なんて、思う私に時透様はやっぱりと言葉を返した。