第16章 柱と隠の恋愛事情 1時透無一郎
『時透様…粗茶ですがぁ!?』
「っ?!」
お茶を運ぶ途中、何もないところでつまずき持っていたおぼんが手から滑り落ち時透様へと淹れたてのお茶が降り注いだ。
バシャンッ…ガタッ…
盛大な音を響かせながらおぼんはからんからんと音をたたせやがて動きを止めた。
全身を強い不安と恐怖が襲う。
先輩方に何度も言われた柱は怖いという話。
流石に嫌なやつと思っていても柱には代わりないわけで…。
頭からお茶を盛大に被った時透様は俯いたままで表情は読み取れない。それが一際私をパニックへと陥れた。
焦りと恐怖が入り交じって
すぐに対応と考えても体は脳の信号を拒絶したように固まったまま動かない。
数秒の時間が経ってようやくハッと我に気づく。
『た、大変申し訳ございません!!火傷はしてないでしょうか?!只今氷水と手拭持って参りますので!!』
ぽたりぽたりと髪から滴る音がする。拭うこともせずに時透様はまだ俯いたまま。
ペコペコと頭を下げる私を見ずに視線はそのまま床へと向けられていた。
怒ってる…これ、完全に怒ってるでしょ…
その場から逃げるように時透様を置いて急いで必要なものを取りに茶の間をでた。
『やべーよ、これ…柱怖いってどんな風に怖いんだよっ』
なんか、泣けてきた。年下なのに
怖がってる自分が恥ずかしい。
手拭い、氷水、念のため救急箱を用意し茶の間へと戻ると隊服を脱いでシャツ一枚の時透様が私を一瞥した。