第2章 ダンデ編
彼と致した後、俺は必ずと言っていいほど夢を見る。彼と本当に初めて会ったあの時の夢だ。俺がまだチャレンジャーだった頃のこと…いつものようにバトルに明け暮れていたあの頃…俺はある悩みを抱えていた。
「くそぉ!!!! ガキに負けるなんて…!!」
バトルは連勝し、負け知らずのチャレンジャーとして絶好調の俺の悩み…それは何かと言うと…
「んー…このポーズでもないな」
勝利した時のポーズが中々決まらないことだった。相棒のリザードンのポーズにしたくて、今日は炎をはくポーズにしたのだが……どうもキバナのそれと被ってしまって仕方がない。俺は即ボツにし、階段に腰を下ろした。少しして、悩む俺に小さな影が被さった。
「お兄ちゃん!! 強いね!!」
そう目を輝かせる5歳くらいの少年…それがユイだった。俺のバトルを見ていたのだろう…俺はお礼を言いながらも、危ないから今度から気をつけろよと答えた。ふと、目を輝かせる少年の顔に涙の跡があるのに気づく。聞けば、彼は母とはぐれて迷子になっていた。
「大丈夫…!!」
そう強がる彼をホップのように肩車しながら、一緒に母親を探す。母親はすぐに見つかり、少年は先程の強がりはどこへやら…涙で顔をぐちゃぐちゃにした。
「お兄ちゃん、ありがとう!!!!」
彼は俺に笑いかけ、そして耳打ちをした。
「俺ね、お兄ちゃんより強いトレーナーになる!! そしたら、僕と結婚してね」
そして、顔を真っ赤にして、母親の元へと駆け寄る少年。そして、最後に振り返り、大きく手を振った。
「約束だよ!!!! お兄ちゃん!!!!」
満面の笑みの少年が夕日と重なり、影ができる。その姿が、勝利の雄叫びを上げる相棒と重なった。……あぁ、そうだ!! このポーズだ!! 名付けてリザードンポーズと呼ぼう。
そして、彼がポケモントレーナーになり、俺の目の前に現れた時、この話をしてあげよう。
俺のこのポーズはあの時決まったんだ、と。