第4章 ホップ編
「…ルリナさん…」
今度は、ユイはすぐに目を覚ました。俺が持つ袋を見て、ユイは顔を逸らす。
「…やっぱりあの時もホップだったんだ」
と呟いた。ルリナさんは肩を竦めながら、
「私はこの子の好きな飲み物や食べ物まで知らないもの」
と言った。俺は苦笑しながら、袋の中にある物を取り出して机の上に置いた。
「じゃあ、私は戻るわね。マスコミの相手しなきゃ…ったく、ダンデのやつ…なにが俺を攻略してみろ…よ!!」
何やら苛立ちそうに立ち去るルリナさんに、お礼を言う。バタンっと扉が閉まると、沈黙が流れた。
「………私の勘違いだったみたい」
1人にした方がいいだろうかと悩んでいた頃、ユイは呟いた。そして、俺を見る。
「よかった…ホップに迷惑をかけなくて」
この歳でできちゃってたらどうしようかと思ったと、無理に笑うユイ。俺は思わずその手を取った。
「キバナさんから聞かれたこと覚えているか?」
「………え?」
キバナさんから聞かれたこと…つまり、トーナメントが始まる前、ユイと距離が離れるようになったあの件のことだった。俺は今度こそ逃がさないぞという意志を込めて手を強く握った。ユイは唇をきゅっとしてゆっくりと頷いた。
「私たちがカジッチュを送り合う仲じゃないってことでしょ? なんで今更…」
「違うんだぞ」
確かに、俺はそう言った。だが、あれは言葉足らずだった。俺は慢心していたのだ。ユイも同じ気持ちなのだろう、と。だが、彼女のあのあとの反応を見て、それは間違いだったと気づいた。俺はきょとんっとするユイにゆっくり口を開いた。