第2章 ダンデ編
あとから聞いた話だが、彼は街で売っていた怪しいキノコを口にしたところ、常に発情しているような状態になったそうだ。次の日、同じベッドで寝ていた俺を見て驚いたことだろう。顔から血の気を失くす彼に、大丈夫だとこれは不運な事故なのだと言い聞かせ、俺は普段通りに過ごした。彼も再びジムチャレンジに挑んでいるようだし、このままなかったことにすればいいと……思っていたのだが……
そこから、彼は何かと理由をつけて度々俺のところへ訪れるようになった。
「……ダンデ。お前、大丈夫か?」
彼が俺のところに来るようになって、月日が経った。今日は久々の同期会だというのに、俺はと言うと昨日の腰の痛みが治らず、顔を顰めていた。
「大丈夫だ」
ただ昨日腰を打ってな…そう言葉を返すと、呆れた顔をするキバナ。
「寝相が悪くてベッドから落ちただぁ!? お前、方向音痴だけでもタチが悪ってのに、その上寝相もかよ!!」
頭を抱えるキバナに苦笑を返すと、なーんだと前に座るソニアがどこか安堵したような顔をする。
「最近、ダンデくん元気ないみたいだったから心配してたんだよ? 休みも取れてないみたいだし」
そんなにチャンピオンって仕事大変なの? と聞く彼女に、俺は内心ドキッとした。つい先日ソニアにランチを誘われたのだが、ユイがいたため仕事を理由に断ったのだ。それも1度や2度のことじゃない。
「そういや、俺様もバトル断られたな。また、ローズ委員長に仕事頼まれてんのか? お前も断ることを覚えたがいいぜ」
俺はかんとか笑みを作りながら、すまんと謝った。いつの間にか、彼らよりもユイと過ごす時間の方が多くなっていた。ルリナも賛同するように頷いた。
「仕事をすることは悪いとは言わないけど、ソニアやキバナの言う通り休むことも大切よ」
俺は彼らの言葉に何かしら返しながら、料理を頬張った。この気の良い同期たちに嘘をつくのは多少なりとも心が傷んだ。