第4章 ホップ編
それを言うと、辺りはしんっと静まり返った。
「お、お前それ……マジで言って……」
気まずそうな顔をするキバナさんに、俺は頷いた。
「みんな、なんで同じことを聞くのか分からないんだぞ」
「お、お前……よりにもよって…本人の前でそんなきっぱりと………」
ちらっとユイを見るキバナさんの視線に合わせるように俺もユイを見る。そして、俺たちの顔は引き攣ることとなった。
「…………キバナさん…」
「お、おう…!?」
ユイは表情のない顔でキバナさんを睨んでいたのだ。今まで鬼の形相というような表情はあったものの、恐怖で一瞬臆してしまうのは初めてだった。そんな彼女が口を開いた。
「今、むしゃくしゃしてるんで、私からチャレンジを始めてもらっていいですか?」
その後、圧倒的な強さでキバナさんをフルボッコなしたユイは、終わってすぐに走ってどこかへと行ってしまった。
「…お前のせいだぞ…ダンデの弟…!!」
「………ユイはなんで怒ってるんだ…?」
俺の言葉にキバナさんは呆れたようにため息を吐いた。俺はユイが消え去った扉を眺めた。そうしたって、ユイは戻ってこないと分かっているのに…。
「………なんでお前がそんな顔してんだよ」
キバナさんは困ったようにボリボリと頭をかいた。様子がおかしいユイを、追いかけなければならないことは分かっていた。しかし、頭と体が追いつかなかった。
「…………俺たちは…同じ気持ちだと思ってたんだぞ」
俺の言葉に、キバナさんは首を傾げた。そして、すまねぇなと謝った。
「俺様、余計なことしちまったな」
俺はその言葉に、少しして首を振った。
「……大丈夫なんだぞ…」
昔から喧嘩したことは何度もあったが、俺も彼女も引きずる性格ではなかったため、次の日にはすぐに普通に話していた。だから、今回も大丈夫だと思ったのだ…。だが、俺はすぐにでも話さなかったことを後悔することとなる。