第4章 ホップ編
「お、俺は別に気にしてないんだぞ!! それにビートも反省してるし…そんなに邪険にしなくても…」
「ホップは優しすぎるんだよ!! ホップの思い踏み荒らして、あんなに酷い言葉を浴びせて……!!!!」
ビートが逃げるように去った後、怒りのはけ口がいなくなり憤慨するユイに、俺は苦笑いを零した。今日のユイは感情を抑えることが苦手のようだ。普段なら、俺がそう言うなら…と表向きは引いてくれるのだが…。
「ビートも不安なんだと思うぞ。何せ、ローズ委員長の推薦を貰っているからな」
不安や重圧に押しつぶされそうになってつい思ってもいないことを言ってしまったのかも…俺がそう宥めると、ユイは軽く首を振った。
「違う。あれは絶対に素」
とバッサリ切り捨てる。んー…これは手厳しいな。俺は気分を変えようと、夕食に誘うなどしてみたのだが、気分じゃないと断られてしまっているし…。
「大体!! なんで他のチャレンジャーもいるのに、ホップに突っかかってくるわけ!?」
感情が荒ぶるユイは、イライラしながら持っていた空の飲み物をゴミ箱に捨てる。空の飲み物はすっかりぺしゃんこなり、ゴミ箱に転がっている。ゴミ収集の業者は大助かりに違いないなと苦笑する。
「ホップ!! 聞いてるの!!」
すっかり鬼の形相となったユイが、俺に眉を顰めた。俺は慌てて頷く。
「ちゃんと聞いているぞ。ユイがちゃんと怒ってくれるから、俺は平気なんだぞ」
と、再び宥めようと試みたが、焼け石に水だったようだ。ユイが拳をぎゅっと握った。
「ホップが無頓着すぎなの!! ホップはもっと他人のことより自分を大切にして!! どうせ、あいつの頭を少しこずいただけで許したんでしょ!! あんなに酷いこと言われたのに!!」
まるで見ていたように言うユイ。俺は否定できずに、頭をかいた。ユイの怒りは最高潮に達しているようで、声の大きさもそれと比例するように上がっていった。周りの好機の視線が刺さるのにも気づいていないようだ。
「ユイ、ごめんな。だけど、少し場所を移動して……」
「私はホップに謝って欲しいんじゃないの!! もっと怒ってって言ってるの!!」