第4章 ホップ編
あれから数年が経ち、とうとうアニキがジムチャレンジをした歳と同じになった。俺は我慢が出来ず、幼なじみ2人の家へと走る。
「見たか!? アニキカッコよかったよな!!」
俺の声に、2人の少年と少女が振り返った。そのうちの1人が俺に向かって走り寄る。
「ホップ!!」
肩ほどある髪が揺れ、俺はふと幼少期のユイを思い出す。そう言えば、俺の初恋は淡く砕け散ったんだったな。
「うわっ!?」
少し思いにふけっていたため、上手く体勢が取れず後ろへと下がる。だが、そこは意地でもユイを落とすまいと俺はしっかりと踏ん張った。アニキからも女の子には優しくしろって言われてるしな!! すると、部屋にはひとつのため息が零れた。
「いい加減、それ止めろよ。ホップが困ってるだろ」
呆れたようにソファから立ち上がった少年。昔の俺が今の彼を知ったら驚くだろうなと苦笑する。おいホップ。お前の初恋の子はもうお前が守ってあげなくても泣き虫じゃないし、何なら街に行けば女子から声をかけられるような男前に育ったぞ。だが、恐らく昔の俺は何よりも…彼女の変化に驚くことだろう。
「……ごめんねホップ…迷惑だった?」
最初、あれだけ冷ややかな態度を取っていた少女が…今や眉を下げ、弱々しい女の子になっている。負けず嫌いで、それはウールー転がしを何回も何回も俺に挑み、そして最終的に俺は彼女に勝てなくなるほどだった。俺は目の前の眉を下げる少女と負けん気の強かった少女が同一人物だと思えず、笑った。なんだか、昔の少年が乗り移ったみたいだ。
「大丈夫だぞ!! だけど、急に走り出すと危ないからな」
そして、俺は彼らに一言ずつ声をかけると、家の外へと出た。
「……2人とも大人になったなぁ…!!」
彼らが変わったきっかけは何だったのだろうかと考えていると、ふと彼の方はナックルシティで迷子になった後泣き虫を卒業したのだったと思い出す。
「案外、恋をして変わったのかもしれないな!!」
俺は近くで大きな欠伸をするウールーにそう話しかけた。