第4章 ホップ編
少女はすぐに見つかった。家の近くでウールーと戯れていたのだ。少女は長い髪をひとつにし、憂いた顔でウールーを撫でていた。
「君がユイか? 俺はホップ!! よろしくなんだぞ!!!!」
少女は冷めた目で俺を見た後、すぐに俺の後ろに隠れている少年に気づくと軽くため息を吐いた。
「…………私、すぐにここから出ていくから」
と、彼女は言う。その言葉に、繋ぐ手から少年が反応を示したのが分かった。
「だ…だめだよユウリ…。それは無理だってお母さんが言って…」
「うるさい!! マサルは黙ってて!!!! どうせマサルは母さんの所にいるんでしょ!!!!」
急に2人が言い合いになり、俺は慌てた。どうやら、おばさんは2人を敬称で呼び分けていたようだが、2人は別々の名前で呼びあっていたらしい。マサルはボロボロと泣き始め、ユウリは唇を噛み締めていた。
「父さんは迎えに来てくれるもん…」
とうとう少女も涙を滲ませながら、ウールーに顔を埋めた。ウールーが首を傾げながら俺を見たが、あまり気にする様子もなく草を食べ続けた。辺りにはウールーたちの声が響き渡った。
「……じゃあ、それまで俺も一緒に待っていいか?」
「………え…」
驚いたように顔をあげる少女。俺は持っていたハンカチで、彼女の涙を拭いた。
「迎えに来てくれるんだろ? なら、別に急がずここで待っていればいいんだぞ!! それまで、俺と遊んでいてくれるか?」
俺の言葉に2人は顔を見合わせ、そして頷いた。
「ありがとう!! 2人は優しいな!!」
それが後に、チャンピオン争いとなる双子だと俺は思いもせず、呑気にウールー転がしで遊び回るのだった。