第4章 ホップ編
「はじめまして。ユイです」
彼女と初めて会ったのは、アニキがジムチャレンジに行ってしまってすぐのことだった。同年齢の子がいると知ると、俺の心は弾んだ。
「……俺はホップだぞ!! よろしくな!!」
母親の足に隠れるようにして恥ずかしそうにこちらを覗く少女。大きな茶色の瞳に、可愛らしい桃色の頬…。俺は胸が高鳴るのが分かった。
「ホップくん、仲良くしてあげてね。この子、本当に人見知りで……同性の男の子が友達になってくれるとおばさん嬉しいわ!!」
だが、俺の初恋は淡く消えてしまうことになる。ユイはなんと男の子だったのだ。……こんなに可愛いのに…!? 人間とはポケモンより不思議な生き物なんだなぁと俺は目を白黒させたものだ。
「あれ? ユイちゃんって男の子だったの?」
「それがね……」
そして、さらに俺は目を白黒させることになる。なんと、俺の幼なじみは2人おり、ふたりとも名前がユイであるというのだ。
「別れた旦那がそそっかしい人でね…まぁ、敬称で使い分けてるから別に困ってはいないんだけど…」
ちらっとこちらを見るおばさん。あぁ、俺が呼ぶときに困ると思っているんだな!! 俺はニカッと笑った。
「大丈夫だぞ!! それより、もう1人のユイはどこにいるんだ?」
先程から内気な様子の少年の姿しか見当たらない。すると、さらにため息をつき、おばさんは答えた。
「多分、その辺りで不貞腐れていると思うわ。ここに来る前にユイくんと喧嘩して、叱ったばかりなの」
俺はそうか!! と納得した。確かに、お母さんに怒られたら1人になりたいもんな!!
「じゃあ、俺ユイと一緒に探してくるんだぞ!! 行こう!!!!」
「あ…」
俺はユイの手を引っ張り、思いっきり駆け出した。ユイは肩くらいある髪を軽く揺らし、俺の顔を見た。そして……
「うん…よろしくねホップ…」
とまるで花が咲いたように笑うユイ。俺はこの子が女の子だったらなぁと子供ながらに思いながら、苦笑したのだった。