第2章 ダンデ編
俺の足はピタッと止まった。……ん?今はチャンピオンになっての心境を聞かれていたはずじゃなかったか? そこで何故俺の名前が出てくるのだろう? 俺は不思議に思って振り返ると、マイクを持ってこちらを見るユイの姿があった。……気のせいではないようだ。その証拠に、彼はもう一度俺の名前を呼んだ。
「ダンデさん!! 俺、貴方に勝ちました!!!!!!」
あぁ、知っているぞ。俺は頷いた。俺の不敗記録を君が塗り替えたんだ。しかし、マイクを持っているのに、その声量は大きすぎやしないだろうか? あまりの大きさにマイクがキンキン言っているぞ。
「俺は貴方に勝ちたかった!! 貴方は夢であり目標でした!!!! だから、俺は貴方に伝えたいことがあります!!!!!!!!」
会場内はしーんと静まり返っていた。皆がみな、新チャンピオンの言葉を聞き漏らすまいとしているようだった。途中、何回かフラッシュの光が見えるが、それ以外はマイクを持つ彼の緊張と興奮の息遣いしか聞こえてこなかった。
「ダンデさん!!!! 初めて会った時から好きです!!!!!! 俺とっ、結婚してください!!!!!!」
無音。彼が言葉を発した後、会場は無音に包まれていた。誰もが思っていただろう…伝えたいこととは前チャンピオンへの感謝一択であるだろうと。だが、現実…彼が放った言葉は……俺へのプロポーズの言葉だった。
「………えええええええええ!?!?!?」
会場中が驚きに包まれ、カメラの音が鳴り響いた。そんなことなどものともしないで、新チャンピオンは…ユイは…俺のところへと歩みを進めた。