第2章 ダンデ編
「明日の試合を中止にはできません」
俺はもう何度言ったか分からない言葉を、再度委員長に告げた。あれから何時間経っただろう…子供たちには申し訳ない。だが、まだ彼らの元には行けそうになかった。
「……君も強情だね」
委員長が呆れたように息を吐く。委員長とは今まで意見が割れることなく、上手くやって行けていた。だが、その話だけは納得が行かなかった。
「この試合はガラル中が注目しています。今更中止にはできません」
「やれやれ…君はもう少し賢いと思っていたよ」
話しは平行線…決着するはずもなかった。委員長がちらりと俺に視線を投げる。
「それは…君のお気に入りのチャレンジャーと関係があるのかな?」
ドクンっと心臓が鳴るのが分かった。ユイの顔が頭を掠める。
「…何を…」
「私が気づかないとでも思ったのかい? 君の家は私が貸しているものだろう。そこに何度も足を運ぶ者がいれば嫌でも気づく」
委員長が俺の前へと立つ。その瞳は俺を非難しているようだった。
「そうだ取引をしよう。君のその我儘を押し殺してくれればいい。そうすれば、私は彼に…ユイくんには何もしないさ」
ユイの名前が出た瞬間、俺は思わず掴みかかっていた。
「子供を…ガラルの未来を…脅しの道具にするのか…!!」
「君が私をそうさせているんだよ、ダンデくん」
私だってできればしたくないさ…委員長は淡々とそう言った。……そうだ…この人はこういう人だった…。目的のためなら…ガラルの未来のためなら…手段を選ばない人…。
「選びたまえ。ガラルの未来か、彼との試合か!!!!!!」
俺の腕を掴み、睨むローズ委員長。俺は唇を噛み、口を開いた。