第2章 ダンデ編
久しぶりのユイの体温に、自分でも驚くほど心臓が鳴っているのが分かった。落ち着け…悟られるわけにはいかないだろ…と自分に言い聞かせる。そして、彼を引き剥がそうとした時、ユイは俺の腹部に顔を埋めたまま乾いた笑いを零した。
「ここ…こんなになっちゃってますけど」
俺はハッとして思っていたよりも強い力で、彼を引き剥がした。表情のなかった彼が痛みで顔を歪めると、慌ててその手を離す。しかし、ユイはその隙をつき、俺の腕を取って再び俺の腹部に顔を埋めた。
「………それ…おさめてあげましょうか?」
上目遣いをしながら、俺の腹部をピッタリとした服の上から舐めるユイ。俺はゾワっとしたものが、駆け上がってくるのを感じ、ぎゅっと目を閉じた。そして…
「………離れてくれ」
ようやくその一言を発することが出来た。分かりやすく身体を強ばらせるユイに、俺は今度は優しい力で彼を引き剥がした。彼も抵抗する気はないらしく、もう俺の腕を取るようなことはしなかった。
「あれで最後だと言ったはずだ。俺はチャンピオン、君はチャレンジャー…そうだろ?」
帽子を深く被り、頷くユイ。俺はリザードンをボールから出した。
「送っていこう。泊まっているホテルを教えてくれ」
すると、ユイはもう近くだと俺の申し出を断った。俺がリザードンを見ると、リザードンはヤレヤレといった顔をする。
「っ!?」
そして、ユイを自分の背に無理やり乗せると、空へと飛び立った。俺は空へと消えていく姿に思わず呟いた。
「…………また泣かせてしまったな」
リザードンが飛び立つ瞬間…大きな水滴が俺の顔を濡らした。それは紛れもなくユイの涙であり、俺は頭を冷やすため自分の家へと歩みを変えた。
「お前!! 今どこにいんだよ!! ユイを送っていったんじゃねぇのかよ!!!!!!」
その1時間後。リザードンからのヘルプを受けたキバナから連絡が来て、俺はようやく家のベッドにたどり着くことが出来たのだった。