第2章 平子夢
「ハッ、海燕とのデートほっぽって来たんか?」
「海燕さんとデート…?まさか、み…見てたんですか…!?」
突如林檎かって位顔を真っ赤に染める。何思い出してそないな顔してんねや。そないな反応、オレに見せんな。海燕を想って見せる顔何ぞ見た無い。
「あの…平子隊ちょ」
「帰りや。」
「え…。」
「帰れ言うてんねん。ここはオマエの隊舎とちゃうやろ。」
「でも……」
「分からんやっちゃなぁ…。今の顔、見た無いねん。」
八つ当たりになってる事は自分でも分かる。でも、止まらんかった。多分今まで無かった程冷たくなったとも思う。
言い切った後にの顔を見ると、絶望を味わったかの様に顔を真っ青にして固まっていた。泣きたいのはオレもや。
「聞こえたやろ、早く…」
「きッ…嫌いにならないで下さい平子隊長ぉおおお!!」
「うぉぁ!?」
しっし、と手を払おうと片手を持ち上げた矢先、はオレの腰周りに飛び付いてきた。隊首羽織りを握り締め、ボロボロと涙を零す姿に言葉を飲み込む。泣き方に色気もクソもない、子供みたァな泣き方だと思うた。
「嫌いにならないで下さい!!何か悪いことしたのなら謝りますからぁ…!」
「いや…ちょ…落ち着きや。顔汚っ。」
「うぐ…ッ、ぐすっ……何十年も、好きだったのに…フラれるだけならまだしも嫌われたら私ッ…生きていけな…っ!」
顔を上げたかと思えば涙と鼻水でぐっちゃぐちゃになりながら縋り付く。何やこれ…オレがむっちゃ悪い事したみたいやんけ…。………ん?
「何十年て、オマエ死神になって十年も経って無いやろ。」
「あ………。」
はばつが悪そうに顔を逸らした。…なんか隠しとるな。直感的にそう感じて、の顔を掴み無理矢理視線を絡める。…あーあ、目ェ真っ赤や。
「話しや。」
「う………。」
「話さんとこのままやで。」
「それはそれで…眼福です…。」
「ほんまブレんなオマエは!」
「ごめんなひゃいはなひまふ!!」
涙で濡れた両頬を抓ると悲鳴を上げたは首を横に振り、少しだけムスッとした顔で少しずつ話し始めた。
「…………平子隊長の顔に一目惚れしたのは本当なんです。」
「それはもうええわ。」