第2章 平子夢
はオレが見た事の無い位幸せそうに笑いながら店の中へと向かって行った。
はー、サイアクや。踵を返し早足にその場を立ち去る。何やねん、やっぱカオやんけ!何が一途や、あんな表情しおって…。オマエが好きなのはオレやろ。笑うならオレの前で笑えや。何海燕の前でヘラッヘラヘラッヘラしとん。
「…しょーもな。」
モヤモヤと胸の中に拡がる感情に頬が引き攣った。ミイラ取りがミイラになる、とはよう言うたもんや。ハマっとるのはオレの方やったんか。情けな。
オレは舌打ち1つ残し五番隊隊舎へと戻った。仕事する気も起こらんわ、明日纏めてやればええやろ。そう思って酒を持ち縁側へ向かう。
「隊長、僕は休憩して来てくださいと言った筈ですが。」
「やかましいわ、明日纏めてやるからえぇやろ!今日は休みや、休み!!」
「はぁ…全く、面倒な人ですね…。」
「なんか言うたかー?」
「いいえ、何も。出掛けてきます。」
惣右介はそう言い残し姿を消した。杯へ酒を注いではグッと飲み干す。何でオレが失恋したみたァになっとんねん。逆やろ、逆!いや、そもそも失恋しとらんわ、別に好きやない。可愛がってた後輩が取られて腹立って……いや、これつまり嫉妬やんけ…。
考えれば考える程、自分の感情が理解出来なくなり酒が進む。
「……。」
全部あいつのせいや。そゆことにしとこ。
そう思いながら、一気に酒を煽ったその時無機質な機械音が静かに響く。
「はぁ……お酒で顔赤くなる平子隊長凄く色っぽい…。」
「!?何で此処におんねんオマエ!」
辺りも暗くなり始めた頃、片手にいつも通りカメラを持ち、隻手を頬に添えうっとりと瞳を細めたがいつの間にか立っていた。あかん、来てた事に全く気付かんかったわ。は興奮気味の表情でオレの隣に来ると両手を床に着き目を輝かせ顔を寄せて来る。
「藍染さんが平子隊長が会いたがってるから見てきて欲しいって言われたんですけど本当ですか!?平子隊長、私に会いたかったんですか!?」
「一言も言うとらんわ、担がれただけやろ。」
「そ………ッ!そんな…急いで来たのに……。」
見てわかる程ガックリと肩を落とす。そんな姿に何となく先程の光景を思い出し、折角少し気分が良くなってきたっちゅーのに、苛立ちがぶり返す。