第2章 平子夢
「ふはっ、ジョーダンや。冗談。」
「あぁ…笑った顔も好きです…。」
見境無くカメラのシャッターを押しまくる。絶対ブレとるやろ、ソレ。もはやレンズ覗いとらんやんけ。
「因みに私は平子隊長に告白して既に23回断られましたけどね!」
「しつこさだけは認めたるわ。」
「これでも一途なんですよ〜。……自分でもちょっと引くくらい、ね。」
「なんて?」
「なんでもないでーす。」
尻すぼみしていく言葉は最後まで聞こえんかった。顔に少しだけ陰が差した気ィしたけど、まぁに限ってそんな事無いやろ。コイツが暗くなっとる所見た事あらへんし。
餡蜜を食べ終え、休憩を終えたオレらは仕事に戻る為帰路につく。そんな時、遠くからを呼ぶ声が聞こえて来た。
「!やァっと見付けたぞ!!お前また仕事抜け出しやがって!」
「ゲッ、海燕さん…!」
「抜け出して来たんかい。」
「捕まったらドヤされる…!平子隊長、また明日!」
「あっ、コラ逃げんじゃねえ!!」
「賑やかなやっちゃなァ…。」
追い掛けてくる海燕から全力で逃げ去って行く。逃げた所で行き着く先は結局十三番隊やろが。が居なくなっただけで随分静かになったな。オレも隊舎戻ろ。
「おかえりなさい、平子隊長。今までどこに?」
「外で休憩しとっただけや。任務終わったんか、惣右介。」
「問題無く。」
隊首室に戻ると惣右介が笑顔で立っていた。現世の任務行かせとったっちゅーのに、随分早い戻りやなァ。
「珍しいですね、外まで出掛けるのは。」
「此処に居ったらがぎゃあぎゃあ煩いからな。適当に付き合うて来ただけや。」
「あぁ…彼女も懲りませんね。」
「ほんまにな!何時になったら諦めるんやアイツ…。」
「隊長も、本気で追い返さない辺り満更では無いのでは?」
「アホ言いなや、誰があんな破天荒好きになるか!」
「ふふ、そうですか。すみません、出過ぎた事を。」
何楽しそうな顔してんねやコイツ。腹立つわァ。
暫く空けていた椅子にドカリと座り墨の渇いた筆をとる。一瞬、アイツの顔が頭に過ぎった。好きかって?…いやいや、無いやろ。手のかかる後輩、それだけや。オレの部下ちゃうけど。
何となく悶々とする腹の中に表しようのない苛立ちを覚えながら、オレは仕事に戻った。