第2章 平子夢
どうせたいした理由は無さそうやけど。オレは頬杖着いてをじっと見詰めた。はもじもじと両頬に手を添えニヤニヤ笑いながら顔を逸らす。
「それはもう……偶然通り掛かった平子隊長の横顔があまりにも美人でカッコ良くて素敵で素敵で…一目惚れです!」
「つまりカオやんけ。」
「そうとも言いますね!」
「しょーもな!」
「しょもーなくないです!私にとって初めての一目惚れですよ。2回目は絶対有り得ません!!」
「顔で選ぶ女の言葉なんて信じられるわけないやろ。」
「ぎゃっ!」
親指と中指で小さな輪を作りの額を思いきり弾く。こんだけめげずに慕ってくるからにはそれなりの理由が有る思うたらなんちゅー理由やねん。
肺に溜まった重苦しい空気を溜め息として吐き出すと、丁度餡蜜が2つ届く。
「わぁ、美味しそう!頂きます!」
「結局食うんかい。」
「だって平子隊長が私の為に頼んでくれたんですよ?残すわけにはいかないじゃないですか。」
「ハイハイ。」
喜々としてスプーンを取ったはクリームと白玉、餡子をたっぷり取って頬張る。幸せそうな顔やなァ。
オレも続いて食べようとスプーンを手に取ると同時に、目の前の女は迷わずカメラを構えた。
「…いい加減にせんとそのカメラ二度と使えんようにするで。」
「怒った顔も素敵です、平子隊長♡」
「やかまし!」
満面の笑みでシャッターを切る。ダメやこいつ、何言うても手遅れや。今日何度目かも分からない溜め息を零し、餡蜜を口に運んだ。お、美味い。
「平子隊長はこんなに素敵なのに何で彼女作らないんですか?」
「オイ、嫌味か。」
「違いますよ!だって今月既に5回告白されてるじゃないですか。全部断ってるんでしょう?」
「え、何で知っとるん…?本格的に怖いわ。」
「えへへ、それ程でも!」
「褒めとらんぞ。」
…ホントに仕事しとんのか?今度浮竹に聞いとこ…。
まだ問いかけの答えを待っているのか、はソワソワしながらオレの顔を見て来る。そんなに知りたいんか。
「好いとらん女と恋人になっても嬉しないやろ。そもそも素性も知らんヤツと付き合えへんわ。」
「あ、じゃあ素性がバレバレの私とは付き合えますね。」
「寝言か?」
「どっからどう見ても起きてるでしょう!」