第1章 ◆若返り(三日月宗近)
三度口づけるとそれは終わり、三日月は布団の中で主をぴったりと抱き寄せる。
主は彼に触れている側面を緊張させながら、温かい胸板に大人しく収まった。
いつもの衣装の上からでは分からない、引き締まった強固な体。
着流しを一枚隔てていてもそれは全身で感じられる。
彼女はウサギのように震えていた。
今夜はおそらく、この固く太い腕に抱かれ、厚い胸板に閉じ込められる。
それはもしかして、痛く苦しいことなのだろうか、と。
彼女は目を閉じてその時を待っていたが、三日月は一向に行動せず、ただ主の前髪を鋤いて撫でているだけだった。
「…三日月さん?」
「うん?」
「何もしないんですか…?」
心臓の鼓動が伝わってくる彼女に欲情しつつも、彼はその歯がゆささえ楽しんでいる。
今夜はこの危うさに耐え、己を鍛えるもまた良し、と。
「口づけをしただろう。一歩前進だ」
「………もっと、全部するのかと思いました」
「はっはっは、俺は鬼畜ではないぞ。可憐な乙女は大事に育ててやらねばな。それ、もう眠るといい。共に眠ろう」
(なんだ、そっか…)
主は安堵し頷くと、言われるがままに目を閉じた。
しかし当然、眠れるわけもない。
それどころか、彼女はこのまま何もしないということに納得ができなくなってきた。