第4章 ◆例の部屋(鶴丸国永)
─ちゅ…─
少しだけ口づけて、すぐに離す。
離してから目を開けるとすでに主も目を開けていて、その顔は溶けそうなくらい紅潮していた。
その反応にバックンと心臓を鷲掴みにされた鶴丸は、すぐに彼女を手離し、後ろに尻もちをつく。
「え、何ですかそれっ…」
「いやっ、そのっ…」
離れるのがあと一瞬遅ければ、彼女を押し倒してしまいそうだった。
彼女の上に馬乗りになって口づけを続けていたかもしれない。
(危なかった…!)
こうも自分のペースを乱されるとは思ってなかった鶴丸は、これから先の行為に不安が募り、心を落ち着かせようと前髪を指でかきあげた。
取り残された主はいきなり拒否をされたと思い込み、さすがにショックを受けている。
「鶴丸さんひどいぃ…嫌だったなら私のファーストキス返してくださいよぉ…」
「え? あー違うっ! これは…」
まいったな、と焦る反面、彼女のファーストキスを貰った事実にもドキドキする鶴丸。
(もう一回っ…)
すぐに欲しくなった彼は、泣きべそをかく彼女をフォローする代わりに、もう一度彼女を抱き寄せた。
「なんですか…?」
「もう一回したい」
「嘘ばっかり…」
傷付いて疑心暗鬼になっている彼女に許しを乞うように、鶴丸は再度、優しく口づけた。