第4章 ◆例の部屋(鶴丸国永)
しかし、すると決まると緊張し出したのは鶴丸の方だった。
たしかにたまらなく欲情しているが、昨日まではこんな関係ではなかった男女。
鶴丸はおそらく、彼女のことは最初から好きだった。
隙があれば抱けたというのも本音だ。
こんな関係になることをどこかで期待していたのに、友人のような雰囲気で接してくる彼女に合わせ、彼女を意識していないと自分に言い聞かせていたのだ。
諦めていた彼女を今さら抱いていいと言われても、どんな顔をして、どんなふうに進めればいいのか悩ましくなる。
「ちょっと鶴丸さん! はやく何かしてくださいよ! 黙り込まれると死にそうですっ…」
それに主は相変わらずこんな感じだし。
「…………そ、そうだな、まずは普通に始めるか、普通にっ」
そんなことを言って、鶴丸は胸に顔を埋めている彼女を起こして目を合わせると、横髪を耳にかけてやる。
改めてよく見ると彼女は自分好みの顔をしている気がして、鶴丸はまた胸が高鳴った。
「ほら…目を閉じろ」
口づけをされるのだと覚悟した彼女は、指示どおりに目を閉じて震え始める。
震えるなよ…と睨む鶴丸だが、まずは目の前の彼女の顔に自分の顔を近づけていき、そっと唇をつけた。