第4章 ◆例の部屋(鶴丸国永)
コタツの中から無理矢理出されたせいで、主の髪は乱れに乱れている。
鶴丸はそれを面白がりながらも、指を差し入れて整えてやった。
「美人が台無しだぞ」
「もう、誰のせいですかっ」
ついでに主は「思ってないくせに」とボヤく。
鶴丸は「思ってるって」と反論するが、彼女はまったく信じない。
テレビからは笑点の笑い声がしているはずなのに、二人は隣り合うと静かになった気さえした。
茶化しあっていても、緊張感は拭えない。
「…さて、ここからどうするか」
鶴丸はそう切り出したが、主に言ったのか、それとも自分に問いかけたのか。
テーブルに頬杖をつき、左にいる彼女を見た。
視線がかち合うと、主はまた顔を赤くして縮こまる。
「…どうするって…」
「一応聞くが、主は夜伽って何か知ってるか?」
「知ってますよっ、馬鹿にしないでください」
「じゃあ、したことは?」
「…したことは、ないですけど…」
「だよなぁ。俺も人の身になって短いし、ちゃんと出来るかどうか危ういもんだ。だがそこらの人間より知識はある。それについては大船に乗ったつもりでいてくれ」
「はぁ…」
勝手に話を進める鶴丸を彼女はじっと見つめ、怪訝な表情を浮かべた。
「というか……鶴丸さん、私相手に夜伽なんてできるんですか?」
「ん? そりゃあできるに決まってるだろ」