第4章 ◆例の部屋(鶴丸国永)
主も、不安から鶴丸の隣にぴったりと寄り添いながら応えた。
「私も読んだだけでは何が何だか…。でも、創作空間というのが何なのかはよく分かりませんが、この部屋はおそらくここに書いてある『○○しないと出られない部屋』というものですよね…?」
「そうだな。『夜伽をしないと出られない部屋』って書いてあるからな」
鶴丸が言葉にしてみると、二人の間に妙な緊張が走る。
二人は審神者と近侍。ただそれだけの関係だ。
もちろん夜伽などしたことはない。
信頼関係はピカイチだが、ボケとツッコミのような二人には恋だの愛だのという浮いた話は今まで全くなかったのだ。
「シナリオに沿った行動を、だと。どうする? 主」
「どうするって…」
動揺しまくりの主に比べ、鶴丸は余裕の表情だ。
彼は十畳ほどの何もない部屋を見回すと、「腹が減ったな」と呟く。
すると不思議なことに部屋の中心にテーブルと饅頭が現れた。
「なんですかこれ…」
「こりゃいいな! よし、俺は喉が渇いた。少し横になりたい」
彼の言葉で今度はテーブルの上に湯呑みが、部屋の奥にはベッドが現れた。
「すごい…」
「何でも欲しいものが出てくるみたいだな。なかなか快適じゃないか?」
鶴丸は他にも魔法のように、コタツに座布団、花瓶、金魚鉢、本棚や時計などを歩くたびに出していった。