第4章 ◆例の部屋(鶴丸国永)
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その真っ白な部屋で、主と鶴丸国永は棒のように立ち尽くしていた。
内番衣装の鶴丸は部屋の色と同化し、対して主の着物は映えている。
白い部屋には一つだけ扉があり、そこには『夜伽をするまで出られない部屋』と張り紙がしてあった。
二人はつい先程まで、広間で皆でくつろいだ後、二人で主の部屋に戻ってきたはずだった。
それが障子を開けたとたん、瞬間移動のようにこの白い部屋に飛ばされたのである。
鶴丸は扉を開けようとするが、鍵穴はないのにノブさえ回らない。
「こりゃ驚きだな。一体誰のいたずらだ?」
鶴丸は腕を組み、まだ少し面白そうにしながら主にそう尋ねた。
主は顔面蒼白になりながら、ひきつった声で答える。
「……これ…いたずらじゃないと思います。今朝の通達で出ていました」
「通達?」
彼女は懐から畳まれた紙を取り出し、そのまま鶴丸に手渡した。
彼はさっそくそれを開く。
『審神者 各位
複数本丸にて、「次元の歪み」が確認されたため通知する。
次元の歪みに立ち入ると、一時的に創作空間に飛ばされる。
創作空間の例として、「とある本丸」「現代パロディ」「箱詰め」「○○しないと出られない部屋」などがある。
飛ばされた場合、空間内の物語が終結しなければ元の次元には戻れない。
空間内のシナリオに沿った行動を取るよう努めること。』
「……なんだこりゃ」
一通り読んでみた鶴丸は眉を寄せた。