第1章 ◆若返り(三日月宗近)
彼は微笑んでいるのか責めているのかよく分からない表情で、まっすぐに彼女の目を見つめている。
「…三日月さん?」
「驚いた。主が存外、思わせぶりであったとは」
「へ…?」
「いやな、俺はどうやら勘違いをしていたようだ。主と俺は互いに好きあっていると」
「はっ…!?」
「そう難しい顔をするな。俺とてこうなれば傷つくものだぞ」
矢継ぎ早に告げられていく真実に、主の理解は追い付いていかない。
それもこれも三日月が、垂れ目のままの真顔でそんなことを言うからだ。
主が圧倒されて何も答えられないうちに、三日月は資料を彼女に返す。
「と、いうわけだ。見合いの手伝いは、悪いが勘弁しておくれ」
「…三日月さん…」
ほんの少し切なさを感じられる表情をした三日月に、主はここでやっと、顔を赤らめた。
彼女はたどたどしく資料を机に置いてから、ぽつぽつと話し始める。
「……分かりませんでしたよ、そんなの。三日月さん、いつも私のこと子供扱いするから…」
「はて?」
「してましたよ。いつも猫みたいに撫でるし、すぐ『じじいに話してみろ』とか言うし…。好きっていうのも、それってどういう意味の好きですか…?」
主の証言に、三日月も少し反省した。