第3章 ◆再会(大倶利伽羅)
そんな考えが顔に出ていたのか、大倶利伽羅さんは言った。
「人の世話ばかりするところは、変わってないんだな」
私は顔が熱くなった。
前世の話をされると、ドキドキする。
「そんなことありません…大倶利伽羅さんにだけですよ」
──あ…
つい雰囲気に飲まれて本音を言ってしまい、私はおそるおそる、彼の反応を待った。
しかし、そこでやかんが鳴った。
しばらく鳴って、彼はそれを止めに立つと、やかんはそこに置いたままで戻ってくる。
途中で床に置いてある仕事用のカバンに立ち寄り、財布を持って私の隣へ座った。
するとそこからお札を一枚抜いて、私の前のテーブルに置く。
折り目のついた、一万円だ。
「……あの、これは…?」
「何もしないつもりで泊めた。…だが、今は我慢できそうにない」
──えっ…
すぐに彼の顔を見ると、いつもと変わらぬ険しい表情で、まっすぐに私を見ていた。
私は混乱気味に頭を整理し、それと同時に彼から後退りをする。
緊迫した空気のなかで、私はなんとか言葉を出した。
「………つ、つまり…一晩、これでどうか、ということですか…?」
一万円で、一晩。
私は本気でそういうことかと思ったのだが、それを聞いた大倶利伽羅さんは血相を変え、「違う!」と言いながら一万円札を“バン!”と叩いた。
「タクシーで帰れと言っている! ここにいられるとあんたに手を出しそうだ!」