第3章 ◆再会(大倶利伽羅)
──「おじゃまします…」
彼のアパートは必要最低限のものしか置かれていない殺風景な部屋だった。
脱いだ立派なスーツも、着いてすぐにクリーニング店のハンガーを使って無造作に壁にかけている。
流しにはカップ麺の空がいくつか重ねられていた。
「風呂は」
いきなり上半身裸になって黒のTシャツに着替えながらそう聞かれ、私は慌てて目を逸らし、「明日休みなので大丈夫です」と答えた。
ジャージだけ借り、脱衣場でブカブカのそれに着替えさせてもらう。
黒に赤が入ったあの頃みたいなジャージを着て私が戻ると、大倶利伽羅さんはなぜかじっとこちらを見ていた。
「…泊めてもらっちゃって、すみません」
いつまでも視線を感じるので、私はもう一度謝罪をしてみた。
するとフイッと顔をそむけ、「かまわない」とだけ返してくれる。
そして小さな音量でテレビをつけた。
大倶利伽羅さんは来る途中のコンビニで買ったカップラーメンを一つ取り出し、お湯を沸かし始める。
私もおにぎりを一つ買っていた。
「あんまりちゃんと食べてないんですか? 自炊とかは…」
「買ってきたもので足りている」
何か作ってあげましょうか、と喉元まででかかっていたけれど、今の私には彼の私生活を心配する権利はない。
審神者だったころとは違うのだ。