第3章 ◆再会(大倶利伽羅)
─────
それから幾日が過ぎ、仕事にも慣れてきた。
大倶利伽羅さんは、いつもの素っ気ない彼のまま。
先輩後輩だけど、昔の立場も引きずっているのか彼は私にあまり指示はしない。
それぞれが個人プレーで、困ったら助けてくれるという感じ。
短い言葉に、冷めた表情で。
あまり優しくされてもドキドキして仕事にならないし、それでもいい。
……でも、あのキスは何だったんだろう。
本当は酔ってた? 出来心? 好奇心?
いくら考えても分からない。
私は振り切るように、パソコンを叩きながらシステムのメンテナンス作業を進めていた。
クリックして次、クリックして次。
無心で手引き書のとおりにやっていく。
少し残業し、どうにかそれは終わった。
──しかし片付けを終えて帰ろうとした午後七時。
『社内システムがおかしいんですけど…』
私が最後に出た営業部からの内線で、システムのエラーが発覚した。
どうやら私が行っていた作業の中で手違いがあったらしい。
システムの修正が必要になるらしく、それも手引き書には書いていないイレギュラーな対応だとか。
私は頭が真っ白になり、受話器を耳にあてたまま無意識オフィスを見回していた。
…皆もう帰っている。
いるのは私と、隣にいる大倶利伽羅さんのみ。
「どうした」
私は無意識に助けを求める視線を送っていたのか、大倶利伽羅さんは事情を聞く前に電話を代わってくれた。
彼は黙って相手の話を聞き、最後に「今日中に直す」と受け答えをして受話器を置いた。