第3章 ◆再会(大倶利伽羅)
「…お久しぶりです、大倶利伽羅さん」
私はドキドキしながら声をかけたものの、彼はそれからこちらを見つめるだけで何も言ってはくれない。
「私もここの社員になったんです。さっき鶴丸さんと燭台切さんにも会いました。…よろしくお願いします」
「………」
うう…何か言って…。
ピクリともしない大倶利伽羅さんはしばらくして「…ああ」とだけ返事をしてくれたが、私は少しショックだった。
…大倶利伽羅さんにとっては、私との再会なんてどうでも良いことだったのかな。
私は今も、泣きそうなほど嬉しいのに。
──ここでの業務は社内システムの構築・保守で、黙々と仕事をこなす大倶利伽羅さんは皆の頼れる存在だった。
私の直属の先輩にあたる。
あまり表情を変えず無口なところは変わっていないけれど、ポツポツと短い言葉で指示を出したり、質問に答えたりしている。
研修である程度のことを学んでいる私は、さっそく大倶利伽羅さんの仕事を手伝うよう言われていた。
「……あの、すみません。うまく行かないところがあるんですが…」
分からないことがあり質問をしてみる。
大倶利伽羅さんのクールな対応は、先輩になると少し怖い。
彼はタイピングを止めずに視線だけで私の画面を睨んでから、「…フォントが違っている」と指摘だけをした。