第3章 ◆再会(大倶利伽羅)
名前を聞いた瞬間に思い出す、褐色の肌の彼。
ううん、思い出したんじゃない。
ずっと忘れられなかった。
私はうるさいくらいに鳴り出した心臓を押さえながら話を聞く。
「うん。伽羅ちゃんも僕らと同期で、システム部の主任だよ」
「相変わらず付き合い悪いけどな」
私は一番気になっていることをすぐに聞こうとしたけど、燭台切さんは私の気持ちを読み取ったのか、聞く前に答えてくれた。
「大丈夫、記憶もあるよ。……主のことも、ちゃんと覚えてる」
うそみたい…大倶利伽羅さんと、また逢えるなんて…。
──私は、前世では審神者だった。
当時、近侍をしてくれていたのが大倶利伽羅さんで、彼はクールなところがあったけど、本当は優しく、いつも私を気遣ってくれていた。
私はそんな彼のことが、ずっと好きだった。
しかし、私の本丸に待っていたのは、悲惨な結末。
随行軍の奇襲により本丸は崩壊し、すべての刀剣男士が破壊、審神者である私も命を落とすこととなったのだ……───
──それが、私の前世での記憶。
転生した現代でも、不思議とその記憶は引き継がれていた。
そして驚いたのは、一緒に戦ってくれた刀剣男士たちもこの時代に転生していること。
実は今までにも数人見かけている。
テレビでよく見る話題のプロ棋士は三日月さんだし、蛍丸くんは有名子役スターになっている。
それだけじゃなくて、満員電車に長谷部さんがいたこともあるし、映画館で泣いている山姥切さんを見かけたし、私の大学では歌仙さんが日本文学の教授をしていた。
みんな今の名前は違うけど、容姿は同じ。
それに見た目だけじゃなくて、惹き付けられる何かがあった。
しかし残念ながら彼らに前世の記憶はなく、関わり合うことはできずにいたのだ。