第1章 ◆若返り(三日月宗近)
主と三日月の付き合いは長かった。
三日月がマメではないため近侍にはならないものの、主は最後には彼を頼る癖がある。
本当に困ったとき、三日月は助けてくれる。
そう期待されていることを三日月は自覚しており、天の邪鬼にもそれを裏切ってみようかとも思うのだが、彼女に助けを求められるとそうもいかない。
手を差し伸べ、子猫のように甘やかし、問題が解決すればまた放し飼いに戻す。
三日月にとって彼女とのその関わり方は面白く、愛おしいものだった。
「…おや?」
白くて丸い虎が二匹、どこからかやってきて、寄り添う三日月と主の周りをくるくると走り回り始めた。
「五虎退か」
三日月は察してそう呟くと、そのとおり虎を追いかけて五虎退がやって来た。
「三日月さま、すみません…。わ…あるじさま、眠ってる…」
「はっはっは、乙女は燃料切れだ」
三日月は虎を片手でふわりと捕まえて五虎退の腕の中に戻してやりながら、主に拘束されている腕を動かし、彼女を起こさないように肩を抱いた。
「…こうして時折、俺が主の手入れをしてやらねばな」
愛しさのこもった三日月の言い方に、五虎退もほっこりとした気持ちになる。
「三日月さまは、あるじさまと仲良しなのですね」
「うん、そうだな。仲良くしてもらっている。…五虎退、じじいの膝ならまだ空いているぞ」
うらやましい、という五虎退の視線に気づいた三日月は、青い衣装の膝をポンポンと叩いてみせた。