第2章 ◆大切な人(膝丸)
「膝丸さん…そんなつもりじゃなかったんです。もっと髭切さんとの時間をとれるようにと、色々考えてしたことで…」
「兄者との時間?」
「はい…。膝丸さんは髭切さんをずっと大切に思ってきたんですから、一緒にいたいだろうなと思って…。それで、私に縛られている時間がなくなったら、もっと時間がとれるのかな、って」
そう正直に説明すると、膝丸さんはますます眉間にしわを寄せ、手首を掴んでぎりぎりと壁に押し付けてくる。
「膝丸さんっ…痛いっ…」
そして切迫した表情で私を睨み付けながら、じっと瞳の奥まで見つめてくる。
「膝丸さん…?」
「…主だっ…」
「えっ…?」
「俺の大切な人は、主だっ!」
綺麗な瞳に私を写され、至近距離でそう叫ばれた。
私は言われたことを理解するのになぜか数秒かかったけど、理解すると体が震え、胸がドキドキと鳴り始めた。
顔が熱くなり「え? え?」と混乱するが、そんな私をさらに押さえつけながら膝丸さんは言葉を放ち続ける。
「兄者はたしかに大切な兄弟だ。兄者がここへ来て日も浅い今は、正直様子が気になって仕方がない。だがっ…俺の守るべき、そばにいたい大切な人は主だ! 主しかいないっ!」
「……膝丸さん…」