第2章 ◆大切な人(膝丸)
避けてないです、と言おうと思ったけど、一日ぶりの抱き締められる感覚にドキドキして、何も言えなかった。
それに膝丸さんの力が強くて、抱き締められながら体も動かないくらい拘束されている。
すると、またいきなり拘束を解かれて、今度は壁に押し付けられなから口づけをされた。
「んっ…」
「今日一日、俺がどんな心地だったか分かるかっ…」
不満をぶつけられるように、膝丸さんの強引な口づけは続いた。
─ちゅ…ぴちゃ…─
「…ん…」
気持ち良くて膝の力が抜けていき、私は壁にもたれたままずるずると腰が落ちていく。
膝丸さんはそれを逃さず、口づけたまま追いかけるようにして同じく腰を落としていった。
「…はぁ…膝丸、さん…」
熱い息を吐いて一度唇を離すと、膝丸さんは思い詰めた表情で、そのまま続きを話し始める。
「いきなり近侍を降ろされ、昼も会わぬよう避けられ、俺から訪ねようにも門前であしらわれ…。こんなやり方は耐えられないっ。不満があるなら言ってくれっ」
私の行動を言葉にされると、たしかに膝丸さんの立場になったらそう感じるものだったかもしれないと分かりハッとした。