第2章 ◆大切な人(膝丸)
それから何度か、膝丸さんを見かけた。
私が畑のそばの縁側を通るたびに彼は慌てて駆け寄ってきてくれるのだが、それは申し訳ないため、私はわざと縁側には近付かないようにする。
たまにわざわざ用事を見つけて私の部屋へ来てくれることもあったけど、時間をとらせず立ったまま用事をすませ、お礼を言った。
「…膝丸のやつ、今日はやたらとこっちに来るね」
加州さんがぽつりと言った。
「そうですね…。私のことを気にかけてくれているんだと思います。気にしなくていいのに…」
「寂しいんじゃない?」
「そんな、まさか…」
私と会えなくなったかわりに髭切さんのそばにいられるようになったのだから、寂しくなんてないはず。
……寂しいのは私のほうだ。
朝の口づけもできないし、夜まで膝丸さんとはあまり会えない。
かといって、夜も髭切さんのそばにいたいだろうから、私とは本当にすれ違う生活になってしまったのだ。
いけない…。
たった一日で寂しくてたまらなくなるなんて…。
これからこれが毎日続くのに…。