第2章 ◆大切な人(膝丸)
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次の日。
近侍は加州さんになってもらったわけだけど、私は当日の朝に自分から膝丸さんを訪ね、サプライズでお伝えすることに。
「おはようございます」
「主!?」
膝丸さんを訪ねると、もちろん同じ部屋に髭切さんがいる。
膝丸さんはもう起きて身だしなみを整えていたけれど、髭切さんは「んんー?」と声をあげ、起きているのかどうかよく分からない。
「すまぬっ、今から迎えに行こうとしていたところだっ」
「いえいえ、お伝えしたいことがあって私からうかがったんですよ。膝丸さん、今日から髭切さんと同じお当番をやってもらえますか?」
「…えっ?」
「近侍は加州さんにお願いしましたので」
そう伝えると、膝丸さんは数秒固まって、目を見開いていた。
びっくりしてる。
サプライズ大成功かな?
隣で寝たフリをしていたはずの髭切さんも、ぱっちり起きて私と膝丸さんとを見比べている。
膝丸さんはすぐには飲み込めないようで、私の両肩に手を置いてガタガタと揺らしてきた。
「あ、主…なぜっ…!」
「膝丸さんは何も心配しなくて大丈夫です。さ、髭切さんもそろそろ起きましょうね。今日からお二人で畑仕事ですよ」
「…そんなっ…」
揺れながら私が笑顔で答えると、そばに髭切さんがいるためか膝丸さんはそれ以上は何も言わなかった。
満足して外に出ると、加州さんが待っていた。
「いたいたー。迎えに行ったのにいないからさ。これからは俺が朝迎えに行くってことでいいんでしょ?」
「はい。すみません。膝丸さんにお話していました。よろしくお願いします」
朝からすっかりおめかしした加州さんと合流し、朝食へと向かう。
これで私のために時間をとられていた朝とお昼も、膝丸さんは髭切さんと一緒にいられる。
喜んでもらえたかな。