第2章 ◆大切な人(膝丸)
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それから膝丸さんは、私の仕事の時間でも、髭切さんの様子を見に行くようになった。
というのも、私があまり膝丸さんには仕事を振らず、わざと髭切さんに会うための時間を作ってあげているからだ。
ある日、膝丸さんが内番の髭切さんを見に畑に行っている間、入れ違うように加州さんがやってきた。
「あーるじ」
「加州さん。どうしたんですか?」
「へへっ、おいしいお菓子があってさ。二つしかないから、俺と主で食べちゃおうぜ」
「わあ、いいんですか?」
加州さんは包みを開き、美味しそうな紅白のお饅頭をころんと二つ出してくれた。
私は赤い方を譲ってもらい、二人で頬張る。
「んん、美味しいです」
「よーかった。膝丸が出ていくのが見えてさ。今なら主、ひとりかなって。…しっかし、膝丸も飽きないね、兄者兄者って。今も畑に見に行ってるんでしょー?」
「はい。髭切さんが来てくれて嬉しいみたいで」
「よくあんなに世話を焼けるもんだよね。主の近侍もやって、兄者のお世話だもん。俺なら疲れちゃうなー」
「……そうですよね」
…考えてなかった。
そっか、近侍として私の手伝いをしてくれているから、髭切さんと過ごす時間が減っているんだ。
気になって様子を見に行ってしまうくらいなんだから、もっと一緒にいるための時間を作ってあげないと。
…いっそ、近侍じゃないほうが…
「…加州さん。お願いがあるんですが…」
「んー?」
───膝丸さんと近侍を代わってくれるように加州さんにお願いしてみると、彼は「別にいいよー」と承諾してくれた。